アルカリ骨材反応の概要
1.アルカリ骨材反応の顕在化

 アルカリ骨材は粗骨材が河川から採取できなくなって、砕石が使用され出してか ら発生しました。 アルカリ骨材反応は、骨材の鉱物組成のある種の成分が、セメン トコンクリート中のアルカリ成分と反応して、膨張することに起因します。

 昭和30年代後半からの高度成長期を続けた、我が国では公共構造物のみならず 民間建造物の建設が大規模に行われ、その主用材料として膨大な量のコンクリート が使用されました。
河川砂利ではアルカリ反応性骨材は自然淘汰的に除去されてしまいますが、その採 取量が多すぎて橋脚の潜堀、自然破壊につながり、各地の河川で砂利の採取が 禁止され、必然的に骨材資源は砕石に置き換わっていきました。
 アルカリ骨材反応が散見されはじめた初期は、関連業界でもごく特殊な現象とさ れ、左程大きな問題だとの認識は一部を除いて薄く、そのために対策が遅れて被 害が広がってしまいました。

アルカリ骨材反応の概要
 昭和57年(1982年)阪神高速道路公団が「反応性骨材コンクリート調査委員会」を 組織し、瀬戸内海の豊島から供給された輝石安山岩によるアルカリ骨材反応の調 査がはじめられました。
この島の砕石の採掘跡が産業廃棄物の処分場となり、その二次公害をめぐって島民 が香川県と行政訴訟を長く続けたことは、産廃処分場の代表的社会問題として、マス コミで大きく取り上げられました。

 昭和58年、先のNHKテレビのキャンペーン「警告!コンクリート崩壊・しのびよ る腐食」で一躍社会的関心を呼び、建設省、道路公団、学会他で、全国の骨材調 査が実施されます。その結果、驚くべき範囲で当該種類の骨材が生産され、使用さ れてきたことが判明しました。

 アルカリ反応はコンクリートの癌であると喝破した学者がいます。
概に建造された構造物のアルカリ骨材反応を防止する根本的方法は、造りなおすこ とですが、供用中の道路・鉄道では実質的に困難で、現状以上の反応の進行を防 止するためにライニング膜を形成してコンクリート中に水分と酸素の侵入を防止する 消極的な対策が実施されましたが、耐久性に問題あって取り壊されるに到った橋梁< も少なくありません。

2.アルカリ・シリカ反応のメカニズム
 アルカリ骨材反応とは、セメントとは、セメント中に含まれているNa2O、K2Oのアル カリ成分と骨材中のシリカ成分が化学反応し、その反応生成物が膨張してコンクリー トを損傷する現象をいいます。
この反応には、骨材の主成分によってアルカリ・シリカ反応とアルカリ・炭酸塩反応 とがありますが、現在我が国で問題になっている大半はアルカリ・シリカ反応です。

@コンクリート中のアルカリ成分
コンクリート硬化体はその容積の細骨材・粗骨材が70〜80%、セメント硬化体組織 が20〜30%の比率になっています。セメント硬化体組織は、水和結晶物と未水和セ メント鉱物及び気泡・ゲル空隙・毛管孔隙等の空隙で構成されています。

 コンクリートは一般的に締め固めによって混練中に巻き込まれたエアはかなり脱泡 されますが、構成材料の比重差による材料分離による空隙は避け得ません。通常こ れら空隙はコンクリート中の10数%程度とされています。
 またセメントの硬化機構上不可避的にできる毛管孔隙は1/10〜1/1000oの細孔 径です。この毛管孔隙は連続していることが多く、通常Na+、K+のイオンを含むアルカリ 液で満たされ、物質移動の通路となります。

Aアルカリ・シリカ反応骨材
 シリカは石灰岩以外の岩石中に40〜80%含有される一般的な鉱物です。アルカ リ・シリカ反応はこのシリカ分が先のコンクリート中の強アルカリで溶解して、ア ルカリ珪酸塩ゲルになり、このゲルが水を給水して膨張し、その圧力でひび割 れを発生させるに到る現象です。

 石英のように結晶質シリカは、低アルカリ性あれば安定でsuga、pH10以下だと10 0ppm程度溶解します。これに比べて結晶度が悪い非結晶質のシリカの溶解度は
pH10以下だと1000ppmに達します。また結晶度がよくも、その結晶が小さいとア ルカリとの接触面積が大きくなって、アルカリ・シリカ反応がおきます。

 ちなみに阪神地区でアルカリ・シリカ反応によるコンクリート劣化の原因のひとつで ある豊島は輝石安山岩です。

アルカリ骨材反応の概要
Bアルカリ・シリカ反応の顕微鏡写真
アルカリ骨材反応の概要
含む鉱物の種類
 プレートの隆起によって形成され、造山活動が繰り返されてきた我が国にはアルカ リ・シリカ反応性鉱物を含有する火山岩・堆績岩・変成岩が全国各地に存在していま す。
 したがってコンクリート用砕石骨材は慎重に選別される必要があるわけです。
アルカリ骨材反応の概要 セメントのアルカリ成分増加の議論
 昭和48年(1973年)我が国は第一次オイルショックに襲われました。燃料消費型 産業であるセメント各社は、セメントの製造方法を従来の湿式法から乾式法であ るSP、NSP(New Suspension Pre-heating)キルンに一気に変換していきました。
省エネルギー化と同時に量産化が可能で、加えてNOxが大幅に減少できたからで す。
 この生産方式で、従来の方式に比して燃料は約40%節約でき、生産量は50%増 大します。

ところがこの製造システムがセメントのアルカリ成分とSO3-イオンの増加をもたらす原 因になったとする説があります。
 このNSP法はセメント原料をエアレーションで粉体混合しますが、このエアはキルン の余熱を利用したエアで、セメント原料をプレヒーティングして省エネルギーを可能に します。
この余熱の循環によってアルカリ成分の凝縮がおこって、セメントのアルカリ成分 量が大きくなるとし、SO3-イオンの増加は燃料を石炭化またはC重油との混焼にした ことに起因するとする説です。

 セメント協会は、「従来からの製造設備とNSP方式に基本的な差はなく、アル カリ・シリカ反応は骨材資源の枯渇によって、砕石に置き換わったことがその 主因である。
 加えて、「セメントのアルカリ量を0.6%以下にするためには、セメント原料で ある粘土を選別せざるを得ず、コスト増につながる。」したがってアルカリ反応を 起こしうる骨材を使用せざる得ないときには低アルカリセメントを供給するほうが、国 民経済的に合理的であると反論しました。

アルカリ骨材反応の概要